◆今週のLAS理論講座「コンディショニングの考え方」◆
コンディショニングの考え方として気をつけたいのは、
「緩めて柔らかくする」ことが最大のパフォーマンスを発揮するということではない、
ということです。
確かに痛みや運動の制限は、筋肉の硬さによって起こります。
しかし、その裏には「緩んでしまった力の入らない筋肉」が存在しています。
筋肉は、正常な状態ではちゃんと縮んだり、機能を発揮します。
しかし、背骨の歪み、栄養バランスの乱れ、様々なストレスなどによって、
働きが悪くなってしまいます。
これは全身に起こるものではなく、部分的に起こるのです。
背骨で言えば、首周辺の歪みが起こると、肩、肘、指の筋肉が機能低下する場合が多いです。
また、腰周辺の背骨が歪めば、もも、ふくらはぎ、足の筋肉がやられます。
栄養も同じように、バランスを乱すとそれぞれの栄養素に影響される筋肉があるのです。
コンディショニングの正しい捉え方は、機能低下の原因を知り、
歪みや栄養バランスなどを改善することで、機能を高める。
そしてその裏で緊張してしまった筋肉が勝手に緩むということです。
今回はその栄養の部分、そして背骨の並びを整えるコンディショニングを紹介します。
(栄養に関する動画)
◆実践編・コンディショニングトレーニング◆
背骨のコンディショニング「スクイジング」
イスに座り、首の後ろに手を組み、背骨を伸ばします。
まずは左右に大きく身体を捻っていきます。
次に、背中をそらしたり、前に屈んだり、背骨を縦に動かします。
その動きをミックスし、左上から右下と、右上から左下に、
背骨の動きで大きく動かしていきます。
大きくゆっくり3~5往復ずつ行いましょう。
◆今週のLAS理論講座「前足(股関節)に体重を乗せるために」◆
先週ご質問いただいた内容でいきます。
多くの投手が悩むところ「前足に乗る」という言葉。
LAS理論なりの解説をしていきたいと思います。
まず二つの要素を考えます。
・骨盤の後傾
体重移動時に骨盤が寝る(ソファにだらっと座ったような形)
これが一番体が前に出ていかない原因になってしまいます。
回旋運動と移動の方向が合わないからです。
骨盤がしっかり立ち(前傾し)、重心移動をし、回旋すると、
自然と胸は前足の上に乗り、股関節が深く曲がった状態となります。
・殿筋の硬さ
ステップ足のお尻の筋肉が硬いと、股関節を上手く曲げられず、
いわゆる「乗った」状態が作れません。
また、お尻の筋肉は、脚を外にひねる筋肉の為、
硬くなると内側に締めることが出来なくなります。
これを緩めるコンディショニングで、前膝の開きを改善しましょう。
◆実践編・コンディショニングトレーニング◆
・殿筋ストレッチ
イス、または床に体育座りの状態で、膝に足をかけ、
かけた足のスネに胸を近づけるようにしてお尻の筋肉を伸ばしていきます。
・バンザイスクワット
バンザイして伸びた状態で、
お尻を後ろにつきだしながらスクワットを行います。
膝が足の上にしっかり乗っていることを意識しましょう。
ゆっくり10回を目安に3セットほど行います。
◆「野球肩のコンディショニング」◆
野球肩になる特徴として、背骨の動きが関係しています。
その背骨をコントロールしているのが骨盤、
そして骨盤をコントロールしているのがハムストリング(もも裏)などの、
股関節周辺の筋肉です。
今回はその中でも特に重要なハムストリングのコンディショニング。
ハムストリングを緩めることで、骨盤の前傾が取れるようになり、
投球動作の中での肩甲骨の動きを確保します。
そしてその後の背骨の動きを改善するコンディショニングを紹介します。
ハムストリングのストレッチを行うときに、
先に膝を伸ばしてしまうと、背中から円くしがちです。
股関節を柔軟にしたいので、
まず先に股関節をしっかり曲げてから膝を伸ばしていく方法を取ります。
◆実践編・コンディショニングトレーニング◆
「ハムストリングストレッチ」
<やり方>
・体育座りで膝と足を肩幅より少し広いくらいに開きます
・内側から両足をつかみます
・足を引っ張るようにして体を前に倒し、膝の中に入れます
・体が起き上がらないように維持しながら膝を伸ばしていきます
息しながら10秒キープ。
これを5回程繰り返しましょう。
骨盤を前に倒す動きが改善され、背骨が反りやすくなります。
すると肩甲骨が柔軟に動き、肩の負担を回避することが出来ます。
そのあと背骨のコンディショニングをすると全く違います。
「背骨のリセッティング」
<やり方>
・イスに座り、首の後ろで手を組みます
・まずは左右に背骨を捻ります
・前後に背骨を円めたり反ったりします
・ミックスして、斜めに動かし、逆のパターンも行います
背骨が動くと肩甲骨も動かしやすくなり、野球肩の予防改善に役立ちます。
どうぞ試してみて下さい。
◆「野球肘と首」◆
首の位置が悪いことが、野球肘に大きな影響を与えます。
何度も繰り返して故障するリスクの多くは、
直接的に肘の筋肉の緊張が起きているからではなく、
首などの他の部位に根本原因があることが多いのです。
ゲーム、勉強、デスクワークなどの姿勢が、
首の位置を悪くする原因になりやすいです。(猫背)
具体的には、頸椎4~6番などが肘周辺の筋肉を動かしているため、
首が前に出た姿勢が影響をもろに与えます。
たいていの選手が首の位置が少し前にあるため、
野球肘ではない選手も、修正することでパフォーマンスが向上する可能性があります。
それではコンディショニングを紹介します!
◆実践編・コンディショニングトレーニング◆
今回は首のマッケンジー体操を紹介します。
マッケンジー体操は、背骨の動きを改善するための、
カイロプラクティックなどの治療法の一種です。
・真っすぐに立ちます(猫背にならないように)
・顎をひきながら首を後に引くように(首を短く)します
・さらに顎を指で上斜め後ろに押していきます
このときも顎は引いた状態を維持します。
10秒を3セットほど行いましょう。
動画でこちらを見ることが出来ますので、是非クリックしてみて下さい。
◆「下部僧帽筋で楽に肘を上げる」◆
肘の上げ方はどうですか?
という質問を多く受けます。
基本的にはそれほど重要視していません。
肘は体から生まれる遠心力によって勝手に動かされるものだからです。
しかし下の動きが良くて、正しい向きに遠心力が働いたとしても、
肩甲骨などの動きに制限があれば、もちろん動かすことは出来ません。
肩甲骨は、ちょうど三角定規のような形をしています。(30度、60度、90度のもの)
そして三角定規の直角の部分が向かい合うようにして左右についています。
肩甲骨は、肘を上げる時にはただ真上にスライドするのではなく、
直角の部分を中心に外側へ回転するのです。
逆に言うと、直角の部分が上がらないように、下に抑えていなければ回りません。
この抑えとなっているのが、下部僧帽筋という筋肉です。
下部僧帽筋は、肩甲骨の内側から背骨の真中から下の方にかけてついています。
ここを意識したトレーニングによって、楽に肩が上がる体を作りましょう。
◆実践編・コンディショニングトレーニング◆
「バンザイ・スクワット」
以前講習会で多用していました、バンザイスクワットです。
スクワットが上手に出来なければ効きませんので、
まずはスクワットを改善して下さい。
土台のトレーニングなど行うと改善しやすくなります。
足を肩幅に開き(平行に)、思いっきり天井に向かって伸びます。
アゴを引きつつ、息を思いっきり吐きながらスクワットの様にしゃがみます。
伸びは強く維持したままふとももが水平になるまでです。
息を吸いながらゆっくり戻します。
しゃがんだところで3秒止め、10回を目安に行いましょう。
効かせるポイントは肩甲骨の内側と背筋です。
終わった後、肩を回して回しやすくなっていれば成功です。
◆「最後の力を伝える指力」◆
肩甲骨のトレーニングで解説したように、
重心(お腹などで)作られた力を、
最後指先までロスせずに伝えなければなりません。
その時に、指のフックのような力が必要になります。
どちらかといえば、ボールをリリースする時というのは、
開いた指を自ら握っていくというよりは、
もともと曲がった指が伸ばされる力に対抗し、
引っかけ続けるというような筋力の使い方になります。
この力を鍛えるのが、指で物を引っ張ったりするトレーニングです。
身近なところでは鉄棒などが有効です。
トレーニング例を紹介させていただきます。
◆実践編・コンディショニングトレーニング◆
「指フックのトレーニング」
鉄棒にぶら下がります。
ボールを持つ時の指を引っかける位置と同じように、
第一関節に一番力がかかるように少し手を開きます。
もし可能であれば人差し指と中指の2本指でぶら下がります。
すこしだけ体を上下させるようにバウンドさせましょう。
特に回数制限を設けず、
指が離れるまで行いましょう。
※
投球練習などがある場合は、
全て終了してから行うようにしてください。
――講習を受けて、何か感じたことはありますか。
成田 私は大学まで野球をやっていたんですが、野球経験がある指導者ほど、バッティングフォーム、ピッチングフォームと、『形』にこだわる傾向があります。ただ、中学生を指導していると、形だけ教えていても、すぐには身につかない。簡単にいえば、ダルビッシュ投手(レンジャース)の投げ方はマネできません。その形を作るには、どうしたらいか。「動き作り、体作りが大事なんだろうなぁ」と何となく感じていたところで、小澤さんの講習を受けて、自分の考えは間違っていなかったと確認することができました。
――そうですね。筋肉の強さや柔軟性によって、体のクセが生まれます。スクワットでいえば、足の前側の筋肉が強く、後ろ側が弱ければ、ヒザが前に出るスクワットになりやすい。こういう子はスクワットの前に、筋肉の強さを変える必要があります。
成田 だいたい、どれぐらいで体は変わるものなんでしょうか。
――2~3か月あれば変わります。
成田 当然、中学生は大人とは筋力が違います。中学生の筋力では実践するのが難しいことはありますか。
――あるとすれば、ステップ幅ですね。中学生が一番難しいのが、股関節を広げる動きだと思います。まだ成長途上のため、股関節周りの筋肉が短い。そのため、大きく開くことができないのです。それでも、立ち投げがよくないのは何となくわかっているので、無理にステップを広げようとした結果、ヒザを使って投げてしまう。よく見られるケースです。
成田 どうしたらいいのでしょうか?
――立ち投げでもいいので、ステップを狭くしたほうがいいでしょう。その際、前足のヒザがつま先よりも前に出ないように注意することが大事です。
成田 あと、面白いと思ったのが、クビの動きがヒジや指先にまでつながっているという話でした。ヒジが痛い子は、クビの動きや姿勢が悪かったりするんですね。
――クビが上体よりも前に出ている子は、肘を痛める確率が本当に高いです。当然、猫背とも関係しているでしょう。姿勢が崩れることで、ヒジにも悪影響が及びます。
――指導している中での疑問や悩みなどはありますか。
成田 ピッチャーの選び方です。いまのうちのエースは、誰が見ても、「ピッチャーはこの子」と思うぐらいの素材を持っています。ただ、公立中の場合はそういう子に巡り合う機会は稀。目立った選手がいないときに、どのような観点でピッチャーとしての資質を見抜くのか。何かアドバイスをもらえると嬉しいです。
――筋力はそれほどなくてもいいので、体を柔軟に動かせる子を選んだほうがいいと思います。硬い子は①柔らかくしてから、②強くする、という2ステップが必要。そのうえで、体がほぐれるのが難しい場合もあります。強さはあとからでもつけられるので、柔軟性を重視したほうがいいでしょう。
成田 特にどこの柔軟性になるのでしょうか。
――背骨ですね。背骨が動かない子が目立ちます。たとえば、猫背の子に背中を反る動きをやらせてみてください。背骨が固まっていると、この動きができないのです。
成田 なるほど、ありがとうございます。あとは、悩んでいるのはケガについての対処です。ヒジが痛い選手がいても、病院によって対応が違う。指導者側が、「なぜ、ヒジが痛くなるのか。どうすれば予防できるのか」の知識をしっかり勉強しなければいけないと思っています。
――ヒジを痛めるのにはいろんな理由があります。ヒジは直線的な動きに対しては、ほとんど負担がかかりません。たとえば、アームカールでヒジを壊すことはまずないですよね。回旋によるねじれによって、負担が強くかかるんです。ピッチングのときに背骨を中心とした回旋を強く意識すると、ヒジにもねじれが加わり、負担がかかりやすくなります。
成田 小澤さんの考えでは、ステップ足の股関節を中心にして投げるんですね。
――はい、体を回す動きは意識しないほうがいいでしょう。正しいスクワットができていれば、胸を前に出すだけで、リリースの形を作ることができます。
成田 講習の中でグラブの使い方に関しては、お話が出てきませんでした。ピッチングフォームの中で、どのように使ったらいいのでしょうか。
――基本は歩きの動作です。歩くのと同じように腕を振る。簡単にいえば、右ピッチャーの場合、グラブを持った左手が上がれば、ボールを持った右手が下がる。左手が下がれば、右手が上がる。この関係性が、無理のない動きにつながると思っています。
成田 なるほど。上げる位置はどうですか。
――歩きの動作なので、イメージとしては、右ピッチャーなら三塁側のほうに上げます。
成田 ドアと同じで「閉じたものは開く」という考えを持っていて、三塁側のほうに上げると、最終的に開きやすくなりませんか? 子どもたちには、キャッチャー方向へグラブを向けるように指導しています。
――大事なのは、ヒジの位置だと思います。グラブを三塁側に上げても、ヒジを曲げていれば、ヒジをキャッチャー方向に向けることはできますよね。
成田 確かにそうですね、納得しました。これを機にまたいろいろと勉強させてください。
――こちらこそ、よろしくお願いします。今日はどうもありがとうございました。
千葉・浦安市立浦安中
成田俊(なりた・しゅん)
1981年生まれ、秋田県出身。大館鳳鳴~立教大(準硬式野球部)。2009年から浦安中の監督となり、昨秋、千葉県大会準優勝、関東少年軟式野球大会優勝。「準備、確認、徹底」を合言葉に、レギュラー、控え関係なく、全員が同じ動きができるチームを作り上げている。
野球ラボ「ブルペン」は、物理学から生まれた独自の投球動作理論「LAS理論」に関する講習会を全国的に行ってきました。その中で、理論を解説したDVDを作ってほしいとの声を各地の先生や選手、保護者の方から頂き、このDVDが生まれました。
ホームページにも紹介している、独自のLAS理論。物理学や、人体構造学を基に、ブルペンが全国各地のセミナー等で提唱している理論です。このLAS理論を分かりやすく解説しています!
毎日短時間で身体を整え、そしてパワーアップを図るための、コンディショニングからトレーニング、動作改善をまとめました!身体作りでもっとも大切なことは、習慣づけること。14種類の一連の流れで行えるため、毎日の習慣づけに最適な内容です。
収録したトレーニング『ベーシック5』は、道具を使わずに自分の体重だけを使って行うものです。子どもから大人まで、誰でも実践できる内容でレベルアップを図れます。
コンディショニングとしての『リセッティング7』は、足、股関節、骨盤、背骨、肩甲骨、首の筋肉に適切な刺激とストレッチを与えることで、筋肉のバランスを整えます。
野球選手にとって必須条件であるケガ予防や、練習や試合前にベストな状態を短時間で作ります。
『オンライン講座「肩肘の使い方」ダイジェスト版』
※この動画はDVDの内容ではありません
<<WEB動画野球教室一覧はこちら>>
ブルペンの活動をインタビューされました【DVD開発秘話】
小学校6年時に野球肘を発症以来、高校卒業まで痛みと闘い続けた。大学では物理学を専攻しながら準硬式野球部に所属し、解剖学、トレーニング理論、整体・カイロなどの理論を取り入れた独自の「LAS理論」を構築し、自ら野球肘を克服。その後3季連続リーグ最優秀投手賞を獲得。それが現在の野球指導理論の原点となった。
先着100名様限定!!
DVD購入者プレゼント実施中!
(野球雑誌「中学野球小僧」「ヒットエンドラン」等で取り上げられました。)
本やDVDなどで勉強しても、結局数が多すぎて何をやっていいのかわからず、、、という方や、短い練習時間の中で基盤となるトレーニングを知りたい方などにお勧めです!
身体の力ばかりが入ってしまい、それほどボールに力が伝わらない、、、
もっと効率的に力を伝える動作やトレーニングを知りたい方にお勧めです!
ケガの原因となる悪い動作を修正したい。動作やトレーニング意外にもケガの原因は潜んでいる、、、
いつも100%の力を発揮したい方にお勧めです!
骨盤や背骨、肩甲骨の使い方などを、NGとOKで比較しながら見易く解説しています。
自分の投球動作を改善するときのイメージ作りとして最適です!
DVDをご購入いただいた皆様から、喜びの声を頂いております。
ベーシックバランスで実際に栄養面にも気を使いつつブルペンで教わったトレーニングを続けていったところ、半年で15km/h伸び、自分でも成長が実感できました。目標の130キロを目指してさらにトレーニングに励んでいきたいです!
大学の野球部で主将を務め、キャッチャーをしていました。チームとしても個人としても練習の仕方などに悩んでいた時にブルペンの指導を受け、初めて栄養補給の大切さに加え、トレーニング方法を身体の構造から考えることが出来ました。投球動作の改善で盗塁阻止率が全く変わったことが大きかったです!
日々のトレーニングの成果はピッチングに限らず、遠投やバッティング、そして大の苦手な走り込み(短&長)へもあらわれています。栄養にも気を配りながらケガをせずに、頑張りたいです!
「前で放せ」「ためを作れ」「開きを抑えろ」などの抽象的な表現でなく、どの関節をどう動かすかなど、具体的な説明が分かりやすかったです!
トレーニングといっても何をやれば良いのか分からなかったのですが、12種類の運動で全身を鍛えられるのがすごく実践的!
身体を正しい状態にリセットすることで、筋肉や関節の動きを整えます。練習・トレーニングの効果を高め、ケガを予防することが出来る、常に行っておきたいコンディショニングとしての一連の流れです。
体幹などの、身体の中心に近い部分から鍛え、LAS理論における効率のよい動作を身につけるだけでなく、必要な筋力を動作に近い形で高め、スピードやパワーに繋がる、トレーニングの基盤となる5種類の流れです。
動作の基本であるパワーポジション。それは正しいスクワットから作られます。スクワットがどのように動作につながるのかを理解し、スクワットを起点とした動作を身につけることで、効率よく身体を動かすことが出来ます。まずは「リセッティング7」や「ベーシック5」によって正しいスクワットを身につけた上で行うことが大切です。そしてこの2つのトレーニングはそれぞれ、スクワットを基本としたスローイング、スイングのトレーニングです。
LAS理論の中の、「後くの字」から「前くの字」の骨盤の運動の中で、キャッチャー方向に正しくエネルギーを伝え、股関節、腹、肩甲骨を連動させて投球するトレーニングです。肩肘の負担が少ない、効率の良い運動を身につけます。
下半身を安定させた中で、身体の正面でしっかりバットを加速させるスイングを身につけるためのトレーニングです。ヘッドに力を伝え、力まずにセンター方向に飛距離を伸ばすようなスイングを身につけられます。
――まずは、講習の感想を教えてください。
酒井 トレーニング理論は非常にわかりやすかったです。正しいピッチングフォームを作るには、トレーニングをして動作を改善しなければいけない。無意識の中でも、正しい動きができる。そこまで持っていかなければいけないのだと感じました。
――体が変わらなければ、フォームは改善できないと思います。たとえば、筋肉のバランスが悪いと、強いところを使って動かそうとするのが人間の本能です。そういうピッチャーに対して、フォームだけを直そうとしても難しいところがあります。
酒井 トレーニングで体を変えることが先になるんですね。ただ、中学校の現場を考えると、なかなか難しいかなとも思いました。子どもだけに任せると、トレーニングのやり方が変わってしまう。スクワットひとつにしても、指導者が見ていてあげなくてはいけないかなと。
――そうですね。正しい形でできているか、周りの見る目が必要になります。
酒井 小澤さんを見て思ったのは、見本が何よりもキレイということです。スクワットの形はもちろん、投げているフォームが子どもたちにとっては最高のお手本。理屈抜きにして、「小澤さんのように投げてみな」と言い続けるだけで、ピッチャーが変わるんじゃないかと思いました。
――ありがとうございます。私も体を変えることで、いまのフォームで投げられるようになりました。
酒井 中学生が指導者に頼らずにやるとなったら、相当な意識の高さが必要になると思います。
――講習を受けていただいたあと、実際に指導に生かしていることはありますか。
酒井 スクワットです。「スクワットの形が、ピッチングに生きる」という考えは、とても興味深かったです。短い練習時間の中であれもこれもやるのは難しいので、「スクワット」と「骨盤前傾」にしぼって、取り入れています。
――まずは正しいスクワットができるようになれば、ピッチングフォームも少しずつ変わっていくと思います。
酒井 スクワットでヒザが足よりも前に出てしまうピッチャーは、やっぱり、インステップの傾向があります。それを改善するためにもスクワット。ピッチングフォームでも、ヒザが前に出ないように気をつけています。あとは、「逆くの字」という表現はわかりやすかったですね。
酒井 小澤さんに、ひとつ質問していいですか。
――はい、どうぞ。
酒井 軸足で立ってから体重移動を起こすとき、これまで「インエッジに乗せるように」と指導していました。でも、小澤さんは講習の中で「アウトエッジに乗せる」と話していましたよね。アウトエッジに乗せてしまうと、体重移動がしづらくなると思うのですが、そのあたりを教えていただけないでしょうか。
――足の外側に体重を乗せるのではなく、重心はそのまま、足の外側が地面に着いているようにするだけなのです。例えば立っている物を少し傾けると、反対側に戻ろうとしますよね。それによって、自然にキャッチャー方向への体重移動が生まれるという考えです。最終的にはもちろん、インエッジにも体重が乗ります。
酒井 クイックのときはどうするんですか?
――クイックのときもアウトエッジです。
酒井 動きが、遅くなりませんか?
――感覚としては、股関節の力を抜いて体をストンと落下させ、スクワットの姿勢をすぐに作ることです。これができれば、早いクイックができます。実際にやってみますね。
酒井 確かに、小澤さんの動きをみると、できていますね。よくわかります。ありがとうございました。
――私から質問ですが、中学生を指導する中で気を付けていることはどんなことですか。
酒井 いろいろとありますが、ひとつは、選手のミスやエラーを精神的・メンタル的な失敗に結び付けないことです。
――「気持ちからだ!」という言葉をよく聞きますね。
酒井 エラーの多くは、技術的な問題です。そこで精神的な話に持っていくのは、違うのかなと思います。
――確かにそうですね。
酒井 あとは、センスですね。「あの選手はセンスがいい」「センスがない」といわれますが、センスは持っているものではなく、磨くもの。センスは必ず磨くことができると思っています。
――実際にどのような練習をしているのですか。
酒井 たとえば、ティーをするにしても、斜め前からのティーはほとんどやりません。片足で打ったり、真後ろからのトスを打ったり、いろんなことをしています。子どもを見ていて感じるのは、少しずつ上達するのではなく、あるとき突然ポンと上がる。イメージは階段です。階段のように、上達していく。さまざまな動きを入れて、感覚を磨くことで、子どもなりに感じることが必ずあります。
――なるほど。また、ぜひお話を聞かせてください。今日はどうもありがとうございました。
酒井顕正(さかい・あきただ)
1980年生まれ、福島県出身。高校から埼玉で過ごし、市立川口高校時代はキャッチャー。大学卒業後、中学校の教師となり、川口市立芝東中、戸塚中、川口南中、戸田市立美笹中に赴任。美笹中を強豪に育て、県大会優勝1度、3位2度の成績を収めている。
――まずは、指導を受けての感想から教えてください。
中島 体をどのように使えば、コントロールがよくなり、いいボールが投げられるのか。それが感覚ではなく、理論的にわかり、とても勉強になりました。
――ありがとうございます。自分自身が学生時代、感覚による指導を受けて、わからなったことがあるので、しっかりと理屈で伝えられるようにと意識しています。
中島 理想の動きができない子に対しても、「こうすればできるようになる」という方法も提示してくれましたね。子どもたちも感覚的に教わるより、わかりやすかったはずです。
――印象に残る指導はありましたか。
中島 スクワットですね。じつは、いま少年野球をすこし見ているのですが、スクワットの練習を取り入れています。それをはじめてから、劇的にコントロールがよくなったのです。
――それはすごいことですね!
中島 おそらく、下半身が安定したことによるものだと思います。フォアボールで崩れることは本当になくなりました。その結果といえるかわかりませんが、ひとつの小学校だけで組んだチームが愛知県大会で準優勝。結果としても、成果があらわれています。
――それは、私としても嬉しい結果です。スクワットの形は、小学生でも理解して取り組むことができましたか?
中島 やはり、教える側がある程度、理解する必要はあると思います。毎日できればいいのですが、少年野球ですからそうはいきません。土日の練習で少しずつ身についていくので、時間はかかります。スクワットを取り入れてから、ピッチングだけでなく、バッティングや守備にもいい影響が出ているように感じます。
――骨盤前傾が、野球の動きの基本になるところですからね。これからも継続してやっていただけると嬉しいです。
――子どもたちを指導するときに気をつけていることはありますか。
中島 こちらが分かっていると思っていても、子どもは分かっていないことが多い。これは小学生にも中学生にも言えること。「ハイ!」といい返事はしても、実際には理解ができていないのです。
――確かに、よく目にする光景ですね。どのように対応しているのでしょうか。
中島 まずは噛み砕いて説明すること。そういう意味でも、子どもたちに感覚的ではなく、理論的に説明できる小澤さんのお話はとても参考になりました。子どもたちもトレーニングをする意味もわかり、前向きに取り組めるように思います。
――ありがとうございます。
中島 子どもと接するときに、「ハイ!」だけで終わらせないようにしています。たとえば、スクワットをやるにしてもこちらが形を見てあげて、できているかできていないかまでを確認する。それがとても大事だと思います。
――今後の指導の要望等はございますか?
中島 小澤さんにはビデオレターという形で、ピッチャーの指導を見ていただいたことがあります。ただ、私のような年齢になると、パソコンの知識が疎く…。映像を使い、もう少し簡単に誰でもできるような方法ができると、とても嬉しいですね。
――わかりました。検討します! 今日はお忙しいなか、どうもありがとうございました。
中島佳宏(なかしま・よしひろ)
1967年8月28日生まれ、愛知県瀬戸市出身。2001年に名古屋市立城山中、09年には名古屋市立森孝中を率いて、全国中学校軟式野球大会に出場。若いときは厳しいスパルタ指導だったが、森孝中に移ってからは選手の自主性を重んじた指導に変わった。現在は名古屋市立桜山中に勤務している。