名将インタビュー

千葉県 浦安中学校 

★「フォーム」以上に「動き作り」が大事


――講習を受けて、何か感じたことはありますか。

成田 私は大学まで野球をやっていたんですが、野球経験がある指導者ほど、バッティングフォーム、ピッチングフォームと、『形』にこだわる傾向があります。ただ、中学生を指導していると、形だけ教えていても、すぐには身につかない。簡単にいえば、ダルビッシュ投手(レンジャース)の投げ方はマネできません。その形を作るには、どうしたらいか。「動き作り、体作りが大事なんだろうなぁ」と何となく感じていたところで、小澤さんの講習を受けて、自分の考えは間違っていなかったと確認することができました。

――そうですね。筋肉の強さや柔軟性によって、体のクセが生まれます。スクワットでいえば、足の前側の筋肉が強く、後ろ側が弱ければ、ヒザが前に出るスクワットになりやすい。こういう子はスクワットの前に、筋肉の強さを変える必要があります。

成田 だいたい、どれぐらいで体は変わるものなんでしょうか。

――2~3か月あれば変わります。

成田 当然、中学生は大人とは筋力が違います。中学生の筋力では実践するのが難しいことはありますか。

――あるとすれば、ステップ幅ですね。中学生が一番難しいのが、股関節を広げる動きだと思います。まだ成長途上のため、股関節周りの筋肉が短い。そのため、大きく開くことができないのです。それでも、立ち投げがよくないのは何となくわかっているので、無理にステップを広げようとした結果、ヒザを使って投げてしまう。よく見られるケースです。

成田 どうしたらいいのでしょうか?

――立ち投げでもいいので、ステップを狭くしたほうがいいでしょう。その際、前足のヒザがつま先よりも前に出ないように注意することが大事です。

成田 あと、面白いと思ったのが、クビの動きがヒジや指先にまでつながっているという話でした。ヒジが痛い子は、クビの動きや姿勢が悪かったりするんですね。

――クビが上体よりも前に出ている子は、肘を痛める確率が本当に高いです。当然、猫背とも関係しているでしょう。姿勢が崩れることで、ヒジにも悪影響が及びます。

★背骨が柔らかい選手をピッチャーに


――指導している中での疑問や悩みなどはありますか。

成田 ピッチャーの選び方です。いまのうちのエースは、誰が見ても、「ピッチャーはこの子」と思うぐらいの素材を持っています。ただ、公立中の場合はそういう子に巡り合う機会は稀。目立った選手がいないときに、どのような観点でピッチャーとしての資質を見抜くのか。何かアドバイスをもらえると嬉しいです。

――筋力はそれほどなくてもいいので、体を柔軟に動かせる子を選んだほうがいいと思います。硬い子は①柔らかくしてから、②強くする、という2ステップが必要。そのうえで、体がほぐれるのが難しい場合もあります。強さはあとからでもつけられるので、柔軟性を重視したほうがいいでしょう。

成田 特にどこの柔軟性になるのでしょうか。

――背骨ですね。背骨が動かない子が目立ちます。たとえば、猫背の子に背中を反る動きをやらせてみてください。背骨が固まっていると、この動きができないのです。

成田 なるほど、ありがとうございます。あとは、悩んでいるのはケガについての対処です。ヒジが痛い選手がいても、病院によって対応が違う。指導者側が、「なぜ、ヒジが痛くなるのか。どうすれば予防できるのか」の知識をしっかり勉強しなければいけないと思っています。

――ヒジを痛めるのにはいろんな理由があります。ヒジは直線的な動きに対しては、ほとんど負担がかかりません。たとえば、アームカールでヒジを壊すことはまずないですよね。回旋によるねじれによって、負担が強くかかるんです。ピッチングのときに背骨を中心とした回旋を強く意識すると、ヒジにもねじれが加わり、負担がかかりやすくなります。

成田 小澤さんの考えでは、ステップ足の股関節を中心にして投げるんですね。

――はい、体を回す動きは意識しないほうがいいでしょう。正しいスクワットができていれば、胸を前に出すだけで、リリースの形を作ることができます。

★グラブの使い方は歩く動作が基本


成田 講習の中でグラブの使い方に関しては、お話が出てきませんでした。ピッチングフォームの中で、どのように使ったらいいのでしょうか。

――基本は歩きの動作です。歩くのと同じように腕を振る。簡単にいえば、右ピッチャーの場合、グラブを持った左手が上がれば、ボールを持った右手が下がる。左手が下がれば、右手が上がる。この関係性が、無理のない動きにつながると思っています。

成田 なるほど。上げる位置はどうですか。

――歩きの動作なので、イメージとしては、右ピッチャーなら三塁側のほうに上げます。

成田 ドアと同じで「閉じたものは開く」という考えを持っていて、三塁側のほうに上げると、最終的に開きやすくなりませんか? 子どもたちには、キャッチャー方向へグラブを向けるように指導しています。

――大事なのは、ヒジの位置だと思います。グラブを三塁側に上げても、ヒジを曲げていれば、ヒジをキャッチャー方向に向けることはできますよね。

成田 確かにそうですね、納得しました。これを機にまたいろいろと勉強させてください。

――こちらこそ、よろしくお願いします。今日はどうもありがとうございました。

<プロフィール>


千葉・浦安市立浦安中
成田俊(なりた・しゅん)
1981年生まれ、秋田県出身。大館鳳鳴~立教大(準硬式野球部)。2009年から浦安中の監督となり、昨秋、千葉県大会準優勝、関東少年軟式野球大会優勝。「準備、確認、徹底」を合言葉に、レギュラー、控え関係なく、全員が同じ動きができるチームを作り上げている。

カテゴリー: お客様の声, 名将インタビュー | コメントをどうぞ

埼玉県 美笹中学校 酒井先生

★体が変わればフォームが変わる


――まずは、講習の感想を教えてください。
酒井 トレーニング理論は非常にわかりやすかったです。正しいピッチングフォームを作るには、トレーニングをして動作を改善しなければいけない。無意識の中でも、正しい動きができる。そこまで持っていかなければいけないのだと感じました。
――体が変わらなければ、フォームは改善できないと思います。たとえば、筋肉のバランスが悪いと、強いところを使って動かそうとするのが人間の本能です。そういうピッチャーに対して、フォームだけを直そうとしても難しいところがあります。
酒井 トレーニングで体を変えることが先になるんですね。ただ、中学校の現場を考えると、なかなか難しいかなとも思いました。子どもだけに任せると、トレーニングのやり方が変わってしまう。スクワットひとつにしても、指導者が見ていてあげなくてはいけないかなと。
――そうですね。正しい形でできているか、周りの見る目が必要になります。
酒井 小澤さんを見て思ったのは、見本が何よりもキレイということです。スクワットの形はもちろん、投げているフォームが子どもたちにとっては最高のお手本。理屈抜きにして、「小澤さんのように投げてみな」と言い続けるだけで、ピッチャーが変わるんじゃないかと思いました。
――ありがとうございます。私も体を変えることで、いまのフォームで投げられるようになりました。
酒井 中学生が指導者に頼らずにやるとなったら、相当な意識の高さが必要になると思います。
――講習を受けていただいたあと、実際に指導に生かしていることはありますか。
酒井 スクワットです。「スクワットの形が、ピッチングに生きる」という考えは、とても興味深かったです。短い練習時間の中であれもこれもやるのは難しいので、「スクワット」と「骨盤前傾」にしぼって、取り入れています。
――まずは正しいスクワットができるようになれば、ピッチングフォームも少しずつ変わっていくと思います。
酒井 スクワットでヒザが足よりも前に出てしまうピッチャーは、やっぱり、インステップの傾向があります。それを改善するためにもスクワット。ピッチングフォームでも、ヒザが前に出ないように気をつけています。あとは、「逆くの字」という表現はわかりやすかったですね。

★インエッジではなくアウトエッジ

酒井 小澤さんに、ひとつ質問していいですか。
――はい、どうぞ。
酒井 軸足で立ってから体重移動を起こすとき、これまで「インエッジに乗せるように」と指導していました。でも、小澤さんは講習の中で「アウトエッジに乗せる」と話していましたよね。アウトエッジに乗せてしまうと、体重移動がしづらくなると思うのですが、そのあたりを教えていただけないでしょうか。
――足の外側に体重を乗せるのではなく、重心はそのまま、足の外側が地面に着いているようにするだけなのです。例えば立っている物を少し傾けると、反対側に戻ろうとしますよね。それによって、自然にキャッチャー方向への体重移動が生まれるという考えです。最終的にはもちろん、インエッジにも体重が乗ります。

酒井 クイックのときはどうするんですか?
――クイックのときもアウトエッジです
酒井 動きが、遅くなりませんか?
――感覚としては、股関節の力を抜いて体をストンと落下させ、スクワットの姿勢をすぐに作ることです。これができれば、早いクイックができます。実際にやってみますね。
酒井 確かに、小澤さんの動きをみると、できていますね。よくわかります。ありがとうございました。

★センスは磨くもの

――私から質問ですが、中学生を指導する中で気を付けていることはどんなことですか。
酒井 いろいろとありますが、ひとつは、選手のミスやエラーを精神的・メンタル的な失敗に結び付けないことです。
――「気持ちからだ!」という言葉をよく聞きますね。
酒井 エラーの多くは、技術的な問題です。そこで精神的な話に持っていくのは、違うのかなと思います。
――確かにそうですね。
酒井 あとは、センスですね。「あの選手はセンスがいい」「センスがない」といわれますが、センスは持っているものではなく、磨くもの。センスは必ず磨くことができると思っています。
――実際にどのような練習をしているのですか。
酒井 たとえば、ティーをするにしても、斜め前からのティーはほとんどやりません。片足で打ったり、真後ろからのトスを打ったり、いろんなことをしています。子どもを見ていて感じるのは、少しずつ上達するのではなく、あるとき突然ポンと上がる。イメージは階段です。階段のように、上達していく。さまざまな動きを入れて、感覚を磨くことで、子どもなりに感じることが必ずあります。
――なるほど。また、ぜひお話を聞かせてください。今日はどうもありがとうございました。

プロフィール


酒井顕正(さかい・あきただ)
1980年生まれ、福島県出身。高校から埼玉で過ごし、市立川口高校時代はキャッチャー。大学卒業後、中学校の教師となり、川口市立芝東中、戸塚中、川口南中、戸田市立美笹中に赴任。美笹中を強豪に育て、県大会優勝1度、3位2度の成績を収めている。

カテゴリー: お客様の声, 名将インタビュー | コメントをどうぞ

名古屋市 桜山中学校 中島佳宏先生

★スクワットを取り入れ県準優勝


――まずは、指導を受けての感想から教えてください。
中島 体をどのように使えば、コントロールがよくなり、いいボールが投げられるのか。それが感覚ではなく、理論的にわかり、とても勉強になりました。
――ありがとうございます。自分自身が学生時代、感覚による指導を受けて、わからなったことがあるので、しっかりと理屈で伝えられるようにと意識しています。
中島 理想の動きができない子に対しても、「こうすればできるようになる」という方法も提示してくれましたね。子どもたちも感覚的に教わるより、わかりやすかったはずです。
――印象に残る指導はありましたか。
中島 スクワットですね。じつは、いま少年野球をすこし見ているのですが、スクワットの練習を取り入れています。それをはじめてから、劇的にコントロールがよくなったのです。
――それはすごいことですね!
中島 おそらく、下半身が安定したことによるものだと思います。フォアボールで崩れることは本当になくなりました。その結果といえるかわかりませんが、ひとつの小学校だけで組んだチームが愛知県大会で準優勝。結果としても、成果があらわれています。
――それは、私としても嬉しい結果です。スクワットの形は、小学生でも理解して取り組むことができましたか?
中島 やはり、教える側がある程度、理解する必要はあると思います。毎日できればいいのですが、少年野球ですからそうはいきません。土日の練習で少しずつ身についていくので、時間はかかります。スクワットを取り入れてから、ピッチングだけでなく、バッティングや守備にもいい影響が出ているように感じます。
――骨盤前傾が、野球の動きの基本になるところですからね。これからも継続してやっていただけると嬉しいです。

★必ず正しい形を確認する


――子どもたちを指導するときに気をつけていることはありますか。
中島 こちらが分かっていると思っていても、子どもは分かっていないことが多い。これは小学生にも中学生にも言えること。「ハイ!」といい返事はしても、実際には理解ができていないのです。
――確かに、よく目にする光景ですね。どのように対応しているのでしょうか。
中島 まずは噛み砕いて説明すること。そういう意味でも、子どもたちに感覚的ではなく、理論的に説明できる小澤さんのお話はとても参考になりました。子どもたちもトレーニングをする意味もわかり、前向きに取り組めるように思います。
――ありがとうございます。
中島 子どもと接するときに、「ハイ!」だけで終わらせないようにしています。たとえば、スクワットをやるにしてもこちらが形を見てあげて、できているかできていないかまでを確認する。それがとても大事だと思います。
――今後の指導の要望等はございますか?
中島 小澤さんにはビデオレターという形で、ピッチャーの指導を見ていただいたことがあります。ただ、私のような年齢になると、パソコンの知識が疎く…。映像を使い、もう少し簡単に誰でもできるような方法ができると、とても嬉しいですね。
――わかりました。検討します! 今日はお忙しいなか、どうもありがとうございました。

プロフィール


中島佳宏(なかしま・よしひろ)
1967年8月28日生まれ、愛知県瀬戸市出身。2001年に名古屋市立城山中、09年には名古屋市立森孝中を率いて、全国中学校軟式野球大会に出場。若いときは厳しいスパルタ指導だったが、森孝中に移ってからは選手の自主性を重んじた指導に変わった。現在は名古屋市立桜山中に勤務している。

カテゴリー: お客様の声, 名将インタビュー | コメントをどうぞ

名古屋市 昭和橋中学校 八幡章雄先生

子どもたちの目がキラキラしていた


――指導を受けての感想を教えてください。
八幡 子どもたちが目をキラキラさせながら、小澤さんの話を聞いていたのが印象的です。そこが一番大きいですね。小澤さんに受けた指導を続けていくと、「うまくなれるんじゃないか」という実感があったのだと思います。
――それはうれしいお話しです。ありがとうございます。
八幡 私自身もとても勉強になりました。今まで、「努力が足りない!」「腕を振れ」と抽象的な表現で教えていたのが、「しっかり立てているか?」「立てていなければ、何を意識すればいい?」「足の裏の使い方はどうだ?」と、具体的に伝えることができるようになりました。

コントロールが改善される

――実際に、その後の練習で取り入れていることはありますか。
八幡 たくさんありますよ。アップを終えて、スパイクに履き替えるときに、足の裏をピアノの鍵盤のように1本1本ほぐしていく。小澤さんから教えていただいたストレッチです。ピッチング練習で、軸足一本で立ったときに少し不安定さを感じたら、ハムストリングを伸ばすストレッチを入れることもあります。
――効果はいかがですか?
八幡 試合ですぐに結果を出せるかというと、まだわからないところもありますが、練習の段階ではコントロールがよくなったピッチャーがいます。また、今まで打たれていたボールが打たれなくなったり、さまざまな点で成長を感じています。

自ら練習法を見つけ出す

――八幡先生が、中学生を指導する中で気をつけている点はありますか。
八幡 若いときは、こちらが1から10まで教えて、「やりなさい!」という指導でした。それがいまは考え方が変わって、子どもに気付かせるように仕向けています。たとえば、真っすぐ立てないピッチャーに、「どうしてだと思う?」「どんな練習をすれば、改善できる?」と、あえて聞く。そうすると、子どもはそれまで取り組んできた練習の中から、「これがいいと思います」と自らやりだすんです。それが、私が思ったのと違う練習法でも、「いいよ、やってごらん」と言うようにしています。
――私の理想は、自分でトレーニングを開発できる選手を育てることです。体のどこを使って投げているか、そして関節をどう動かせば体を鍛えることができるかの2点がわかれば、自分で開発できます。そういう意味で、子どもに練習法を考えさせる取り組みは、とてもいいですね。
八幡 あと、気をつけているのは「キーワード」を入れることです。たとえば、「アウトエッジ」「前くの字」「後くの字」。キーワードをパッといえば、子どもたちは「こういう形なんだ」と理解ができます。やるべきことが明確に見えているので、私も子どもも納得したうえで練習に取り組むことができています。

<プロフィール>


八幡章雄 やはた・あきお
1966年4月5日、愛知県名古屋市生まれ。
松蔭高校~愛知教育大。大学まで野球を続け、サードとして活躍。
大学卒業後、中学の教員となり、現在の名古屋市立昭和橋中が4校目。
数学科。授業では「学び合い」の手法を用い、生徒同士で教え合うスタイルを取っている。
それを野球にも生かし、監督が選手に一方通行で教えるのではなく、選手が自ら気付くよう、あえて「待つ」ことを大事にしている。

カテゴリー: お客様の声, 名将インタビュー | コメントをどうぞ
DVD好評発売中!
安心の返品・返金保証
講習会お申し込み
メルマガ登録