埼玉県 美笹中学校 酒井先生

★体が変わればフォームが変わる


――まずは、講習の感想を教えてください。
酒井 トレーニング理論は非常にわかりやすかったです。正しいピッチングフォームを作るには、トレーニングをして動作を改善しなければいけない。無意識の中でも、正しい動きができる。そこまで持っていかなければいけないのだと感じました。
――体が変わらなければ、フォームは改善できないと思います。たとえば、筋肉のバランスが悪いと、強いところを使って動かそうとするのが人間の本能です。そういうピッチャーに対して、フォームだけを直そうとしても難しいところがあります。
酒井 トレーニングで体を変えることが先になるんですね。ただ、中学校の現場を考えると、なかなか難しいかなとも思いました。子どもだけに任せると、トレーニングのやり方が変わってしまう。スクワットひとつにしても、指導者が見ていてあげなくてはいけないかなと。
――そうですね。正しい形でできているか、周りの見る目が必要になります。
酒井 小澤さんを見て思ったのは、見本が何よりもキレイということです。スクワットの形はもちろん、投げているフォームが子どもたちにとっては最高のお手本。理屈抜きにして、「小澤さんのように投げてみな」と言い続けるだけで、ピッチャーが変わるんじゃないかと思いました。
――ありがとうございます。私も体を変えることで、いまのフォームで投げられるようになりました。
酒井 中学生が指導者に頼らずにやるとなったら、相当な意識の高さが必要になると思います。
――講習を受けていただいたあと、実際に指導に生かしていることはありますか。
酒井 スクワットです。「スクワットの形が、ピッチングに生きる」という考えは、とても興味深かったです。短い練習時間の中であれもこれもやるのは難しいので、「スクワット」と「骨盤前傾」にしぼって、取り入れています。
――まずは正しいスクワットができるようになれば、ピッチングフォームも少しずつ変わっていくと思います。
酒井 スクワットでヒザが足よりも前に出てしまうピッチャーは、やっぱり、インステップの傾向があります。それを改善するためにもスクワット。ピッチングフォームでも、ヒザが前に出ないように気をつけています。あとは、「逆くの字」という表現はわかりやすかったですね。

★インエッジではなくアウトエッジ

酒井 小澤さんに、ひとつ質問していいですか。
――はい、どうぞ。
酒井 軸足で立ってから体重移動を起こすとき、これまで「インエッジに乗せるように」と指導していました。でも、小澤さんは講習の中で「アウトエッジに乗せる」と話していましたよね。アウトエッジに乗せてしまうと、体重移動がしづらくなると思うのですが、そのあたりを教えていただけないでしょうか。
――足の外側に体重を乗せるのではなく、重心はそのまま、足の外側が地面に着いているようにするだけなのです。例えば立っている物を少し傾けると、反対側に戻ろうとしますよね。それによって、自然にキャッチャー方向への体重移動が生まれるという考えです。最終的にはもちろん、インエッジにも体重が乗ります。

酒井 クイックのときはどうするんですか?
――クイックのときもアウトエッジです
酒井 動きが、遅くなりませんか?
――感覚としては、股関節の力を抜いて体をストンと落下させ、スクワットの姿勢をすぐに作ることです。これができれば、早いクイックができます。実際にやってみますね。
酒井 確かに、小澤さんの動きをみると、できていますね。よくわかります。ありがとうございました。

★センスは磨くもの

――私から質問ですが、中学生を指導する中で気を付けていることはどんなことですか。
酒井 いろいろとありますが、ひとつは、選手のミスやエラーを精神的・メンタル的な失敗に結び付けないことです。
――「気持ちからだ!」という言葉をよく聞きますね。
酒井 エラーの多くは、技術的な問題です。そこで精神的な話に持っていくのは、違うのかなと思います。
――確かにそうですね。
酒井 あとは、センスですね。「あの選手はセンスがいい」「センスがない」といわれますが、センスは持っているものではなく、磨くもの。センスは必ず磨くことができると思っています。
――実際にどのような練習をしているのですか。
酒井 たとえば、ティーをするにしても、斜め前からのティーはほとんどやりません。片足で打ったり、真後ろからのトスを打ったり、いろんなことをしています。子どもを見ていて感じるのは、少しずつ上達するのではなく、あるとき突然ポンと上がる。イメージは階段です。階段のように、上達していく。さまざまな動きを入れて、感覚を磨くことで、子どもなりに感じることが必ずあります。
――なるほど。また、ぜひお話を聞かせてください。今日はどうもありがとうございました。

プロフィール


酒井顕正(さかい・あきただ)
1980年生まれ、福島県出身。高校から埼玉で過ごし、市立川口高校時代はキャッチャー。大学卒業後、中学校の教師となり、川口市立芝東中、戸塚中、川口南中、戸田市立美笹中に赴任。美笹中を強豪に育て、県大会優勝1度、3位2度の成績を収めている。

カテゴリー: お客様の声, 名将インタビュー   パーマリンク
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